ボランタリーチェーンとは?

社団法人日本ボランタリーチェーン協会の定義によると、「異なる経営主体同士が結合して、販売機能を多数の店舗において展開すると同時に、情報等を本部に集中化することによって組織の結合を図り、強力な管理のもとで、仕入れ・販売等に関する戦略が集中的にプログラム化される仕組みとその運営」となっています。

 

▼VCとは?

独立小売店が同じ目的を持った仲間達と組織化し、チェーンオペレーションを展開している団体をいいます。

ボランタリーチェーン(VC)には、フランチャイズチェーン(FC)と同様に加盟店を指導するチェーン本部が存在しますが、加盟店が主体となっているため、加盟店同士の横のつながりがある(相互助成が可能である)のが特徴です。

 

VCとFCの違い

 

▼VCの利点

・仕入れや設備投資などのコスト削減

・地域消費者のニーズを店舗に反映しやすい

 

独立小売店単独で行わなければならなかった、仕入れや設備投資などを共同で行えるため、コスト削減が大きなメリットとなります。

また、加盟店が主体となって本部を結成しているため、各加盟店からの情報を活用することにより、店舗が努力すれば近隣する地域消費者のニーズへの対応が売場へ反映されることが可能となります。

VCは、地域の消費者に支持される「適正な価格」や「要望に対応した品揃え」の継続的な提示により、地域に密着した中小独立小売店の「近隣性」という利点を生かすことができるのです。

 

▼VCとFCの相違

ボランタリー・チェーン(以下、VC)の場合、特にフランチャイズ・チェーン(以下、FC)との区別がはっきりわかっていない場合があるので、VCとFCの本質的な違いを明らかにしておきます。

 

 VCとFCの相違表

 

VCとFCの共通点

1.本部の強力な指導によるチェーンオペレーションの展開

・VCもFCもチェーンオペレーションを展開する点および営利組織であるということは同じです。
いずれもチェーンオペレーションを展開するので、本部に戦略立案・管理機能が集中化されており、各々の加盟店は、本部の強力な指導のもとに置かれています。

2.加盟店の資本独立

・VCもFCと同様に、資本的に独立した多くの小売店によって組織が形成されています。

 

VCとFCの相違点

 

VCの仕組み

 

1.構成の仕組み 

VC
加盟店が自発的な意志に基づいて組織を結成あるいは加盟したものです。
本部は、加盟店によって結成されたものなので、加盟店は、本部利益からの戦略的投資という利益の還元を受けることができます。 
FC
本部が別個の企業であり、加盟店とのつながり方は、本部と加盟店が一対一の契約で成立しています。*
加盟店が本部の結成主体でないために、契約パッケージの範囲内での利益が受けられるのみです。
注)*FCは、まず本部会社が、「私が本部事業者になります」と言明して事業内容のパッケージを開発し、加盟店を勧誘し、「その内容で良い」と判断した小売店や新規開店者が、本部会社と一対一の契約をするものです。

 

FCの仕組み

 

2.横のつながり

VC
加盟店の自発的な組織ですので、加盟店同士の横のつながりがあります。
FC
本部と一対一の契約ですので、加盟店同士での横のつながりは一切ありません。

 

▼VCの和名意訳

 

VCの和名意訳

 

「任意連鎖店」から「同志結合体」へ

VCとはいうまでもなくボランタリーチェーン(Voluntary Chain)の略です。
これを日本語に直訳すると、「ボランタリー」は「自発的」とか「任意」を意味し、「チェーン」は「鎖」を意味しますから、「自発的連鎖店」ないしは「任意連鎖店」となります。

これまで伝統的には「任意連鎖店」といってきました。
VCを結成あるいは加盟するのは、独立経営者の任意の意志によるといった理由から、また「自発的連鎖店」というよりも響きがいいといった理由からです。

しかし、競争の厳しい小売業界のなかで、VCの本質を理解することなくVCに加盟し、「任意」という言葉を「自分の気に入ったところだけを勝手につまみ食いする」と解釈して行動するというのでは、他の業態に対してVCの強みは発揮できません。

そこで、新しい時代に向けてのVCを、より的確に理解するには、それにふさわしい訳語をつけ、VCについてのイメージの共有化を図ることが必要です。

VCを一言でいうならば、
『チェーンオペレーションを展開するために、独立自営者が自発的に結成した組織』
ということができます。

このような解釈を基本として、VCの意訳を考えると、次のようになります。

第1に、個々の自営業者が自発的に1つの組織を結成するには、価値・理念・目的などを共有していなければなりません。
いいかえれば、志を同じくする者(同志)の集合を前提としなければなりません。

第2に、結成した組織が有効なチェーンオペレーションを展開し得るためには、加盟店が価値・理念・目的などを共有するだけでなく、あらゆる経営活動も、各々の加盟店が有機的に強く関連づけられた共通のシステム(結合体)を基礎にして展開されねばなりません。

したがって、今はVCを「任意連鎖店」から「同志結合体」と呼んでいます。

「同志」といえば、昔は血判を押して、共通の目的のために命を賭ける仲間でした。
いまは肉体的な命は賭けないでしょうが、小売商の命である商売を賭ける仲間が集まってつくるのが、VCであるということも、この新しい言葉は示しています。

 

▼VCの理念

・意欲的な独立商業者の結合

・強力なチェーン本部の組織化・支援による加盟店の繁栄

・地域社会および広く世界に貢献

 

この理念を実現するためにボランタリーチェーンは結成されます。

 

VCの理念

 

商業者の場合は、地域社会に貢献することによって、お客から支持を得られ、その存続・成長が図られます。このような地域社会への貢献の度合いをさらに高め、より大きな成長を確保しようとする意欲的な商業者により、VCは結成されます。

しかし、意欲があっても、独立自営である限り、目標達成には大変な努力と大きな困難が伴います。

VCは、この困難をできる限り削減していくための1つとして、独立の意欲ある商業者が自発的に結合して、強力なチェーン本部をつくり、その支援のもとで、地域社会への貢献度を、より一層高めようとするものです。

したがって、強力な本部がつくられるためには、加盟店の精神的および財政的な支援がまず必要ということです。

かつてアメリカのケネディ大統領は、その就任演説において、「国民諸君は国が諸君に何ができるかを求めずに、諸君が国に何ができるかを考えよ」と高らかにうたいあげました。

これは、VCにそのまま当てはまります。

加盟店は、まず自分が何を本部に貢献できるかを考え、実行しなければなりません。
そうすることによって、本部の能力が高まれば、加盟店はその本部からの強力な支援を受けることができるのです。

 

▼VCの目的

・垂直的統合の利益

・加盟店競争力の強化

・顧客満足の向上

 

VCの目的

 

共同の努力によって垂直的統合の利益を追求する

垂直的統合とは、2つ以上の流通段階の機能を人為的に統合して、より連携された機能をもたせることです。
これまでは、卸機能をもつ小売がVCであるとされてきました。

しかし、メーカーの流通部門参入や小売におけるサービス提供の拡充等のような環境構造が著しく変化し、競合が激しくなりますと、VCとしても、卸機能と小売機能の人為的統合だけではなく、それを基礎にしてさらなる川上や川下まで引き込み、各種流通段階での機能統合や連携の再検討が必要とされてきています。

チェーン・オペレーションにより加盟店の競争力を高める

VCのチェーンオペレーションは、小売機能と卸機能の統合、規模効率の達成、情報システム力の展開などにおいて、独立商店では達成できない、すぐれた競争力を発揮することができます。

VCは、この困難をできる限り削減していくための1つとして、独立の意欲ある商業者が自発的に結合して、強力なチェーン本部をつくり、その支援のもとで、地域社会への貢献度を、より一層高めようとするものです。

VCにおいては、このようなオペレーションによって加盟店の競争力を高めることが目的の1つとされます。
そのために必要なものは、専門的なVCマネジメント集団としての本部の充実です。

加盟店は、自分の店の繁栄のために、積極的に本部機能の強化に協力することが重要です。

消費者ニーズとその変化に的確かつ迅速に対応し顧客満足を高める

すべての小売店経営において、
『消費者ニーズとその変化に対応して、お客の満足を自店の展開の中で高めていく』
これが商売の鉄則です。

そのためには、自分の店の狙い客のニーズと変化をいち早く的確につかみ取り、販売に生かすことが必要です。

勝負の分かれ目はそこにあるのですが、これを個店で行うには限界があります。

そこで、個店の経営力強化を目的としてVCというチェーンシステムが構築され、共同の組織力による情報の収集・分析をもとにした仕組みによる顧客満足の向上が図られ、それが加盟店の利益につながるのです。

 

▼VCの定義

『異なる経営主体同士が結合して、販売機能を多数の店舗において展開すると同時に、 情報等を本部に集中することによって組織の統合を図り、強力な管理のもとで、 仕入れ・販売等に関する戦略が集中的にプログラム化される仕組みとその運営』*

 

VCの定義

注)*ここでの定義は、VCの本質を明らかにして、レギュラー・チェーン(RC)や フランチャイズチェーン(FC)等の類似した組織との比較の視点を表現したものという意味です。

 

VCはチェーンオペレーションの展開システム

VCは、チェーンオペレーションを展開するシステムということです。

その内容としては、販売機能を多数の店舗において展開すると同時に、情報を本部に集中化することによって組織の統合を図り、強力な管理のもとで仕入れ・販売等に関する戦略が集中的にプログラム化されているということが含まれます。

したがって、少なくともチェーンオペレーションを展開しない限り、VCとはいえません。
チェーンオペレーションを展開する点においては、VCはRC、FCと同じです。

VCは独立店が主体となって本部を結成

まず第1に、VCはRCと違い、加盟店といってもそれぞれの店自体は資本的に独立しています。

さらに第2として、VCはFCと違い、加盟店は横につながりをもつ組織体をつくっており、この組織体がVC本部をつくっています。

VCにおいては、このようなオペレーションによって加盟店の競争力を高めることが目的の1つとされます。
そのために必要なものは、専門的なVCマネジメント集団としての本部の充実です。

すなわち、VC本部は、加盟店独自もしくは加盟店と主宰事業者が結成の主体だということです。

これがRC、FCと根本的に違う点です。

 

▼VC経営の4原則   

・共同の原則(共同活動で加盟店の繁栄を)

・利益性の原則(本部機能の発揮で経済的利益の追求を)

・調整の原則(有効な競争で活性化を図り、過度の競合は調整を)

・地域社会への貢献の原則(地域に貢献し、店の永続的繁栄を)

 

4原則

 

共同の原則

『VCの経営においては、加盟店の繁栄のために、本部および加盟店による積極的な共同活動(チェーンシステムのもとでの一体化された活動)が必要とされる』

VCの目的は、同志加盟店の繁栄を組織力発揮で達成することにあります。

そのためには、本部による加盟店への的確な支援・指導と、これに対する加盟店の積極的な協力という相補的な共同活動が必要です。

利益性の原則

『VCは、チェーン本部の強力な支援・指導のもとに結合システムの経済的利益を追求する組織である』

加盟店のなかには、「本部が儲けていて、加盟店に金銭的利益を還元しない」という声もあります。

しかし、本部は、本部人材の確保・育成や物流システム・情報システム等の強化に利益を再投資し、利益はその結果である加盟店繁栄として還元されるのです。

この戦略的投資を行うためには、本部自体が利益を生み出さなければできません。
これこそが加盟店にとっての大切な利益還元となるのです。

 

 利益性の原則

 

調整の原則

『各加盟店の商圏を尊重し、加盟店同士の過度な競合をできる限り調整する』

VC活動のなかで、各加盟店の商圏を尊重することは当然です。
しかし、このことは商圏内における加盟店同士の有効な競争を否定しているものではありません。

加盟店同士の過度な競合を調整した上での有効な競争は、加盟店の活性化をもたらし、VCのシェア拡大につながり、チェーンの競争力も増すからです。

これまで「非競合の原則」から、加盟店同士の有効な競争まで否定するかのように捉えられてきました。

VCは、一部のFCと異なり、加盟店に独占的販売権を提供するものではありません。
むしろ、有効な競争は、経営努力による加盟店同士の活性化につながると理解すべきです。

地域社会への貢献の原則

『地域顧客の満足をより高めて、地域社会とともに生きることによってのみ永続的繁栄が可能になる』

顧客の満足を高めることがVCの組織戦略です。
地域社会に貢献するという原則は、VC加盟店の経営は、地域のお客さまのためにある店(「店・客共栄」)ということです。

加盟店はその店の立地している地域のお客さまと同じ地域住民です。
店は地域社会に欠かすことのできない施設でなければなりません。

地域社会に真の意味で貢献していくには、同じ住民・市民として住民からの信頼と支持を受ける必要があります。
永続的繁栄のためには、商業者である前に良識ある地域住民であることが大切です。

 

▼VCの組織と経営  

・戦略決定機能は本部(専門集団)に委託

・個々の加盟店における戦略行使の制約

 

VCの組織と経営

 

戦略決定機能は本部(専門集団)に委託

『加盟店も本部構成メンバーの一員だからといって、そのまま本部の戦略決定に参画するものではない。』

VCは強力な競争力のあるチェーンオペレーションの機構(本部)をもっています。
本部はVCマネジメント(経営)の専門集団で固められています。

ですから、加盟店は、この専門集団に戦略に関する意志決定機能を委ねるほうが有効だと理解すべきです。
本部に戦略的立案や管理機能を委ねることになる結果、加盟店は、自分の役割である店での販売活動に専念できるわけです。

もちろん、主宰企業と加盟店、あるいは加盟店同士で、「加盟店総会」を設置して、本部の戦略展開に自らの意見を反映させることができます。

個々の加盟店における戦略行使の制約

『VCの加盟店は、それぞれ資本的には独立しています。
だからといって、経営的には組織をはなれて自分勝手な戦略行使で行動してもいいということにはなりません。』

加盟店は、目的共同体である組織のメンバーであり、本部チェーンのチェーン・オペレーションの構成単位ですから、自主的にその役割をは果たす義務があります。

そのため、実際面では、加盟店独自の戦略行使は制約されることになります。

 

▼VC本部機能と加盟店の関係

・仕入集中管理

・VCのチェーン規模効果や効率の追求

・情報の本部集中と加盟店へのフィード・バック

・本部による加盟店の業績評価

 

加盟店は本部の管理機能発揮に積極的に協力していく。

これに対し、本部は加盟店から与えられた機能を発揮して、加盟店の繁栄に最善を尽くし、また、戦略投資によって得た利益を加盟店に還元していく。

この相補努力の仕組みと役割が、加盟店と本部の関係です。 これからの小売業界の競争のなかでは、本部と加盟店との相補的な協力関係がなければ、VCの成長は望めません。

では、ここで本部として最も基本になる、4つの管理機能は何かを示しておきましょう。

仕入れの集中管理

加盟店が競争力を確立するためVC組織をつくり、その共同による力を発揮するには、自分たちの組織内に卸機能を取り込んだシステムをつくることが基本です。

規模効率を含むシステム管理での成果を上げるため、また、チェーン全体のマーチャンダイジング情報を本部が的確に把握するため、仕入れを本部で集中管理することが非常に有効であり、必要とされる機能です。

 

仕入の集中管理

 

VCチェーン規模効果や効率の追求

VCもチェーン組織であるかぎり、本部は常に加盟店を増やす等のチェーン強化機能を持ち、またそれを推進しなければなりません。

ただ、加盟店もVCの組織単位であり、同志結合の主役であるという立場を認識するなら、自店に返ってくるメリット増加のためにも、加盟店を増やす等のチェーン強化に協力すべきです。

 

チェーン規模効果や効率の追求

 

情報の本部集中と加盟店へのフィード・バック

高度情報化の時代においては、情報をより効果的に使う企業が競争では有利な立場に立ちます。

目的を持って的確に収集された情報を有効に活用することにより、情報の質は充実し、正確性や信頼性が増します。 したがって、情報管理も本部の基本的機能です。

VCの場合、直接に消費者の意向をキャッチできるのは、前線の現場でお客と直接にふれ合い販売を担当している加盟店です。

加盟店はいち早く、こうした店舗経営でのナマ情報すなわち素材情報を、本部に集中させることが大きな協力となります。

VC本部は、この素材情報を整理し、分析し、加盟店の立地・店規模・業種・業態などによって、何を、いつ、どこで、何のために、いかに、どんな方法で、その店に使わせたらよいかを洗いだします。

そして、実務に即した形に加工して、指導活動のなかで店にフィードバックすべきです。

 

情報の本部集中と加盟店へのフィード・バック

 

本部による加盟店の業績評価

VC本部は各加盟店の業績を常に掌握・評価している必要があります。
業績評価をすることにより、加盟店を戦略的に方向づけるためです。

そして、どのような販売状況でどのような販売業績であるかを分析することにより有効な店舗管理を行うことになります。

加盟店としても、店の業績を正しく、積極的に報告することが重要です。
それにより、本部による戦略の方向付けが明確になり、加盟店の経営指導が間違いなく行われます。

 

本部による加盟店の業績評価

 

以上、社団法人日本ボランタリーチェーン協会より抜粋。